歯周病治療perio

歯周病とは

歯周病とは、歯を支える骨（歯槽骨）が細菌感染によって徐々に破壊されていく慢性疾患です。
初期段階ではほとんど自覚症状がないため、発見が遅れることも多く、
気づいた頃にはすでに歯がぐらついたり、噛むと痛みが出たりと進行しているケースも少なくありません。

日本では成人の約8割が何らかの歯周病に罹患しているといわれ、
歯を失う原因の第1位が歯周病です。
放置すると、最終的には歯を支えきれず自然脱落に至ることもある恐ろしい病気です。

【1】歯周病の主な症状

以下のような症状に心当たりがある場合、歯周病の可能性があります。

歯ぐきから血が出る（ブラッシング時の出血）
歯ぐきが腫れて赤くなる
歯が長くなったように見える（歯肉退縮）
噛むと痛みがある
歯が動く・浮いたような感覚がある
口臭が気になる
歯ぐきから膿が出る

これらの症状は、歯ぐきの炎症が進み、歯を支える骨が吸収され始めているサインです。

【2】歯周病の原因

プラーク（歯垢）
歯の表面に付着する白く粘着性のある細菌の塊です。
1mgのプラーク中には1億個以上の細菌が存在するといわれています。
これが長時間残ると、歯ぐきの炎症（歯肉炎）を引き起こします。
歯石
プラークが唾液中のカルシウムやリン酸と結合して石灰化したものです。
表面がザラザラしているため、新たなプラークが付着しやすく、細菌の温床になります。
歯ブラシでは除去できず、歯科医院で専用の器具を使って取り除く必要があります。

プラークや歯石が歯と歯ぐきの間の隙間「歯周ポケット」に入り込むと、酸素の少ない環境を好む歯周病菌が増殖し、炎症を深部に進行させます。

【3】歯周病の進行段階

病期	歯周ポケットの深さ	状態	治療の目安
歯肉炎	〜3mm	歯ぐきのみに炎症。腫れ・出血あり。	ブラッシング・クリーニングで改善可
軽度歯周炎	4mm前後	炎症が歯槽骨まで拡大。骨の吸収が始まる。	スケーリング・SRPで改善を図る
中等度歯周炎	4〜6mm	骨の吸収が進み、歯が動揺。口臭が強くなる。	深部清掃・外科的治療の検討
重度歯周炎	6mm以上	歯槽骨の大部分が喪失。歯がぐらつく・脱落の危険。	抜歯や再生療法を含む総合治療が必要

【4】歯周病の治療法

検査・スケーリング（基本治療）
内容：歯周ポケットの深さ測定、歯石除去、レントゲン診査
時間：約30分
費用：¥2,000前後（保険適用）
超音波スケーラーを用いて、歯肉縁上の歯石やプラークを除去します。
初期段階ではこの治療だけで炎症が改善することもあります。
SRP（ルートプレーニング）
内容：歯周ポケット深部の歯石を専用器具で除去
時間：30〜60分／回
回数：1〜6回（症状に応じて）
費用：¥1,500前後／回（保険適用）
歯根の表面を滑らかに仕上げることで、細菌の再付着を防ぎます。
メンテナンス（SPT：歯周支持療法）
内容：定期的なクリーニング・再評価
頻度：3〜4か月ごと
費用：¥2,000前後／回（保険適用）
炎症が治まった後も再発予防のために継続的な管理が必要です。
歯周病は一度治っても、清掃を怠ると再発する慢性疾患です。

【5】早期発見・早期治療の重要性

歯周病は「骨が溶ける病気」です。
治療によって進行を止めることはできますが、失われた骨は自然には元に戻りません。
（再生療法によって一部回復できる場合もありますが、適応は限られます。）
したがって、骨が溶ける前に発見・治療することが何より重要です。
少なくとも年2回（半年ごと）の検査・クリーニングを推奨します。

【6】全身との関係

喫煙
ニコチンや一酸化炭素が血流を悪化させ、歯ぐきの防御機能を低下させます。
タールの沈着により歯石がつきやすくなり、炎症が見えにくく進行します。
糖尿病
血糖コントロールが悪いと感染抵抗力が下がり、歯周病が進行しやすくなります。
逆に、歯周病を治療することで血糖値が改善することも報告されています。
歯周病と糖尿病は相互に悪化させ合う関係にあります。
心疾患・脳血管疾患
歯周病菌やその毒素が血流を介して全身に拡散し、動脈硬化を誘発します。
歯周病患者は、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが約2〜3倍高いといわれています。
妊娠・早産リスク
妊娠中はホルモンの影響で歯肉が炎症を起こしやすくなります。
歯周病菌が血中に入ると、**早産や低体重児出産のリスクが上昇（大7倍）**するという報告もあります。
妊娠中・出産前の口腔管理は母体と胎児の健康に直結します。
骨粗鬆症
女性ホルモンの減少により骨密度が低下すると、歯槽骨も脆くなり、歯周病が進行しやすくなります。
閉経後は特に注意が必要で、定期的な口腔チェックが推奨されます。

【7】当院の歯周病治療の特徴

CT・デジタルレントゲンによる精密診査
担当衛生士制による個別メンテナンスプログラム
痛みに配慮した超音波スケーリングと局所麻酔対応
再生療法・外科的処置も可能な医療体制
全身疾患との連携管理（糖尿病・循環器科・産婦人科など）

【8】まとめ

歯周病は「静かに進行する生活習慣病」です。
一度発症すると自然には治らないため、定期的なプロフェッショナルケアと毎日のセルフケアが何より重要です。
歯を守ることは、全身の健康を守ることでもあります。
「痛くなってから行く」ではなく、「悪くなる前に行く」──それが現代の歯科医療における予防の基本です。